マリオから学ぶゲームデザイン

人に遊んでもらえるゲームデザインについて考える。

まずは王道の任天堂・マリオの生みの親である宮本茂さんから学んでいきたいと思う。

教材は社長が訊く『New スーパーマリオブラザーズ Wii』

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やっぱり宮本さんといえばマリオだろうということでこちらを選んだ。

今回面白いと感じた話はドンキーコングの開発について。

宮本

ええ。それと同時に、
横スクロールの走りみたいなゲームが
ようやく出てきた時代だったんです。*1
そういったゲームを実際に遊びながら、
僕はもともとID(インダストリアルデザイナー)なので*2
「なぜ面白いのか?」という構造の部分をいろいろ考えていました。
「なぜお客さんはもう1回やろうとするのか?」 と・・・。

 


岩田

ゲームオーバーしたあとで
「100円を入れて、もう1回」というのは
どういうときに生まれるのか。*3

 


宮本

はい。要は「悔しい」 からなんです。
でも、その悔しさはどういう構造で生まれるのか。

 


(中略)

宮本

ええ。
で、たとえばひとつのアクションがあって、
それはカンタンにできるとします。
それとは別のカンタンにできる操作がある。
でも、そのカンタンにできるようなことを
「2つ同時にしろ」と言われるとなかなか難しいんです。

 


岩田

ひとつひとつはカンタンにできることを
2つ同時にやろうとすると難しくて、
それがカンタンにできそうだと思うからこそ、
失敗すると「悔しい」と感じるんですね。

 

(中略)

宮本

ショートカットで転がってくるタルのルートを予測しながら
ちゃんとゴールまで到達すると。
どんどん上にのぼって行くのはカンタンなんです。
転がってくるタルをよけるのもカンタンなんです。
でも、その2つを同時にしようとすると難しくなる。
しかも近道をしようと考えるから、さらに難しくなる。

 

 

つまり簡単なアクションと簡単なアクションを組み合わせることで

難しいことが生まれる。

一つ一つは簡単だから、簡単なことだと思えるし、

そう思っているのにできないから悔しくてまたやってしまう…

つまり一つ一つは難しくする必要はないんだということ。

そして何より遊ぶ人が簡単そうに感じることが大切なのかなと感じました。

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そういえば「たたいてかぶってじゃんけんぽん」も簡単な2つを組み合わせたゲームですが、みんな結構楽しそうにやりますね。そういうことでしょうか。

この考えはファミコンが出てまだゲームに慣れていない人が多い時代というのもありそうですが、面白い話だと思い自分用にまとめておきます。

またマリオのデザインについてもこちらで話されています。

社長が訊く『New スーパーマリオブラザーズ Wii』

岩田

マリオのトレードマークと言えば
ヒゲや帽子、それにオーバーオールですけど、
なぜマリオにはヒゲがはえていて、帽子をかぶり、
オーバーオールを着ているのか。
そのことについて、宮本さんは何度も語っているはずですけど、
この機会にもう一度、訊かせてもらえますか?

宮本

はい。
初代のマリオは16×16のドット絵だったんです。*4

 

(中略)

 

岩田

圧倒的にドットが足りないんですよね。

宮本

足りないんです。
すぐ8×8ドットになっちゃうんです。*5
それで、鼻を描いてヒゲを描いたら
口かヒゲかわからないので、そこでドットは稼げると。

岩田

ヒゲを描けば、口は描かなくていいんですよね。

宮本

描かなくていい、これは大きいです。
あごは1ドットあればいいですし。
それに目は、縦に2ドットで描くとかわいいかなと(笑)。
で、髪の毛を描ききれないので、帽子をかぶせたら
帽子は2ドットで抑えられる。

岩田

帽子も、ドット数を抑えるためにかぶせたんですか。

宮本

それに、髪の毛にすると
アニメーションにするのが難しいですしね。
しかも、帽子をかぶせれば、
すぐ下に目があっても大丈夫ですし。

岩田

それで顔ができましたと。

宮本

でも、残りのドット数で
カラダを描こうとすると限界があるんです。
しかも、ちゃんと走らせたいので
アニメーションにする必要があったんですけど、
当時は3パターンしかできなくて。
そこで、走るとき、腕を振りますけど、
動きをわかりやすくするために
腕と体の色も違っていたほうがいいと思ったんです。
そんな服はあるのかというと・・・。

岩田

オーバーオールですね(笑)。

宮本

そう。オーバーオールしかないんですよね。
そこで、オーバーオールを着せることにしたんですけど、
幸いなことに、ゲームの舞台は建築現場でしたから・・・。
もうこれは大工さんと呼ぶ以外にないでしょう(笑)。

岩田

なんという必然!(笑)

宮本

で、跳んだときに動きがよくわかるように、
手に白い手袋をはめることにして。


岩田

全部、機能から必然としてデザインされていたんですね。
宮本さんの専門が、工業デザインであるということを
実によく表していますよね。
それでピョンピョン跳ぶから
「ジャンプマン」と呼ぶようになったんですね。

マリオのデザインは帽子、ヒゲ、オーバーオール、手袋といった部分がありますが、

すべて、当時の小さなドットでも人を表現するための工夫だったんですね。

機能から考えるデザインというものが面白いと感じました。

 

こちらも当時のゲームのスペックからなる話ですが、工夫を聞くのは面白いですね。

 

*1:ドンキーコングは1981年、前年にパックマンなどが出ている

*2:金沢美術工芸大学に入学し工業デザインを専攻されていた

*3:ドンキーコングはアーケードが初出

*4:頭から足まで全身で16×16ドット

*5:2頭身にした場合、顔に使えるドット数は縦が8ドットまでしか使えない

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